自分に合った前立腺がんの治療選択


前立腺がんの治療法を選択する際には、がんの病態(進行の程度「病期分類」、悪性度「グリソンスコア」、PSA検査値)を考え合わせる必要があります。がんの病態によって適した治療法が異なるためです。治療法に関する情報はこちらをご覧ください。

他の臓器に転移のない限局性前立腺がんの場合でも、大きくは超低リスク、低リスク、中間リスク、高リスクの4つに分かれ、それぞれのリスクにあった治療法があります。以下の図を参考にしてください。

リスクと治療法

前立腺がんでは、病期分類としてTNM分類を用いることが一般的です。TNMの3種のカテゴリーに基づいて診断し、決定します。

Tカテゴリー:原発腫瘍*の広がり
Nカテゴリー:所属リンパ節(前立腺からリンパ液が流れている骨盤内のリンパ節)への転移の有無
Mカテゴリー:離れた臓器などへの転移(遠隔転移)の有無

* 原発腫瘍とは、原発部位(がんが初めに発生した部位)にあるがんのことで、原発巣ともいいます ¹。

各カテゴリーごとの詳細な分類については、「国立がん研究センターがん情報サービス」をご覧ください(外部サイトへ遷移します)。

1. 出典:国立がん研究センターがん情報サービス

前立腺がんの悪性度を表す病理学上の分類です。


スコア がんの悪性度
6以下 性質のおとなしいがん
7 中くらいの悪性度
8~10 悪性度の高いがん

採血により血中の腫瘍マーカーの値を確認します。高いほど前立腺がんの可能性が高まりますが、前立腺肥大症や前立腺の炎症などの良性疾患でも高くなることがあります。


基準値 4.0ng/ml未満

PSA値を前立腺の体積で割った値で、高いほど前立腺がんの可能性が高まります。

超低リスク 病期T1c、グリソンスコア6以下、PSA値10ng/mL未満、前立腺生検にて採取した組織の中で陽性が3本未満でがんの占める割合が50%以下、PSAD値0.15ng/ml/g未満
低リスク T1~T2aかつグリソンスコア6、PSA値10ng/mL未満
中間リスク T2b~T2c、グリソンスコア7、またはPSA値10~20ng/ml(低リスク、高リスク以外)
高リスク T3aまたはグリソンスコア8~10、またはPSA値20ng/mL以上

日本泌尿器科学会編「前立腺癌診療ガイドライン2023年版」(メディカルレビュー社)を参考に作成


適切な治療法を選択するために重要な考え方​

前立腺がんの治療法にはいくつかの選択肢があり、それぞれのメリット・デメリットをよく理解することが大切です。また、ご自身やご家族の考えをしっかり整理しましょう。​

現在では、多くの方が自分自身で治療法を選択しています。

治療選択に関する不安や悩みごとがある場合は、「がん相談支援センター(国立がん研究センターがん情報サービス)」に相談することもできます(外部サイトへ遷移します)。​


シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)

SDMは患者中心のケアを実現するための重要なプロセスで、医療者と患者が情報を共有して一緒に治療方針を決定する「共同意思決定」のことです。

患者と医師が目標や目的を共有し、ともに力を合わせて治療方針を決定していきます。前立腺がんの治療についてはいくつもの選択肢があり、いろいろと悩まれるのも当然です。それぞれの治療法をよく理解して、自分のライフスタイルや価値観(大切にしたいこと)に合った治療法を選択することでQOL(生活の質)の向上に繋がります。

まずは、ご家族や周りの方とよく相談して、自分の希望や意思をしっかりと主治医へ伝えましょう。

サポートガイドのイメージ

医師への相談時に使えるサポートガイドを準備中

セカンドオピニオン

診断内容や治療方針について不安や迷いがある場合、現在診療を受けている担当医とは別の医師の意見を聞くことで、納得して治療法を選択することができます。

セカンドオピニオンは、患者がよりよい医療を受けられるように認められている権利であり、日常的に行われているため、担当医に気を遣ったり、遠慮したりする必要はありません。

前立腺がんの場合、別の泌尿器科医へ意見を求めることもできますし、放射線治療について詳しく知りたい場合は、放射線科医の意見を聞くこともできます。

近年では、インターネットによるオンラインセカンドオピニオンを実施している施設も増えています。

話し合う医師と患者

前立腺がんの患者会サイト

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