前立腺がんの検査と診断


前立腺がんの診断のためには、PSA検査直腸診超音波検査、画像診断が用いられます。これらの検査で前立腺がんが疑われた場合、最終的な診断のために前立腺生検を行います。

一般的には、下記の流れで検査や診断が行われます。

検査から診断までの流れ

1.スクリーニング検査

スクリーニング検査は、がんの早期発見・早期治療を図る目的で、症状が現れていない人や高リスクの人に実施します。次ステップの確定診断と比較して、費用や体の負担が少ないのが特徴です。

PSA検査(腫瘍マーカー検査)

PSA検査は採血で検査ができるため、最も簡単に調べることができます。前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)は正常の場合でも血液中に少量存在しますが、前立腺がんになると血液中に多量に漏出するため、その濃度を測定します。

検査は自治体の「がん検診」に含まれている場合があり、費用は無料〜数千円です。まずはお住まいの自治体へお問い合わせください。また、民間の健診や人間ドック、泌尿器科では自費で受けられます。

直腸診

直腸診は、医師が肛門から指を入れて直腸壁越しに前立腺の状態を触診する検査です。がんがあると、そこが硬く触れる場合があります。

超音波検査

超音波検査は、医師が肛門から棒状の超音波を発する器具(プローブ)を挿入し、画像にて前立腺の状態を確認する検査です。

超音波検査の様子
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前立腺がんの疑いあり

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2.確定診断

前立腺生検

細い針を前立腺に刺して組織を採取します。採取した組織を顕微鏡で調べて、がん細胞があるかないか、あるならどの程度の悪性度なのかを調べます。

採取の方法は、超音波画像で前立腺を確認しながら、直腸内腔から針を刺す「経直腸式」と会陰部(肛門と陰嚢の間)から針を刺す「経会陰式」があります。直腸には、痛みを感じる神経がないため直腸からの採取は痛みが少ないといわれる一方、会陰からの採取の方が感染のリスクが少ないといわれています。

がんの見落としがないように、系統的に多数か所を生検します。

また、最近では画像解析技術の進歩によりMRI画像でがんの存在部位が示されることが多くなり、MRI画像と超音波画像を融合させて、異常がある部位を狙って採取する標的生検もあり、より高い精度での検査が可能といわれています。

経直腸式

経直腸式の様子

経会陰式

経会陰式の様子
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前立腺がんと診断

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3.病期(ステージ)診断

病期(ステージ)とは、がんの進行度合いを、がんの広がりや転移の有無などに基づいて示す指標です。患者さんの状態を理解し、適切な治療を行うために重要です。

画像による病期診断

CT検査や骨シンチグラフィー、もしくは全身MRI検査を行い、骨やリンパ節、その他の臓器に転移していないかを調べます。

検査で使用される放射線や放射性薬剤からの被ばくによる体への影響は、過度に心配する必要はないとされています。

  • CT検査
    Computed Tomography(コンピューター断層撮影)の略であり、X線を用いて体の断面の画像を撮影する検査。体内の様子を細かく確認できるため、さまざまな目的で行われる。
  • 骨シンチグラフィー検査
    薬剤の注射後に特殊なカメラで全身を撮影し、がんが骨へ転移しているかを調べる検査。
  • MRI検査
    Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)の略であり、X線ではなく強力な磁石と電波を使用して体内の状態を確認する検査。

画像診断

生検前にMRI検査を実施していない場合、 MRI検査を必要に応じて行い、前立腺のどこにがんがあるのか、 前立腺の外へ広がっていないかを調べます。

CT検査装置

CT検査装置 画像提供元:GEヘルスケア・ジャパン​

MRI検査装置

MRI検査装置 画像提供元:GEヘルスケア・ジャパン​

病期分類

前立腺がんでは、病期分類としてTNM分類を用いることが一般的です。TNMの3種のカテゴリーに基づいて診断し、決定します。

Tカテゴリー:原発腫瘍*の広がり
Nカテゴリー:所属リンパ節(前立腺からリンパ液が流れている骨盤内のリンパ節)への転移の有無
Mカテゴリー:離れた臓器などへの転移(遠隔転移)の有無

* 原発腫瘍とは、原発部位(がんが初めに発生した部位)にあるがんのことで、原発巣ともいいます ¹。

各カテゴリーごとの詳細な分類については、「国立がん研究センターがん情報サービス」をご覧ください(外部サイトへ遷移します)。

1. 出典:国立がん研究センターがん情報サービス

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